「金継ぎ」 じゃない

 

darning

「金継ぎ」を教えて欲しいとよく聞かれます。金継ぎから漆を連想してもらえるのはありがたいくらいで、お手軽な金継ぎはエポキシで接着することだったりするようです。
 知り合ったデザイナーの佐久間年春さんは「漆繕い」と呼ぶことにこだわりを持たれていて深く賛同しました。デザイナーによる1本の線へのこだわりが感じられる繕いは美しく、じっくりと時間をかけて修繕した痕跡に時間の移ろいが感じられるのです。
 金継ぎは、漆はかぶれるとか、時間がかかるということで「漆継ぎ」ではなくなってしまっています。「金継ぎ」といっておけば、漆を使わなくてもいい免罪符となっているのでしょうか。金で接着しているわけではないのに「金継ぎ」と呼ぶことに違和感を感じていた時に「漆繕い」という言葉が、もやもやをすっきりと吹き飛ばしてくれました。

 「金継ぎ」を「漆繕い」と言いかえることは小さな抵抗かもしれない。それでもあえて「金継ぎ」という言い方をやめてみることから、なにか変わるような気がします。

 妻が子供の洋服をダーニングという繕いの技法で直し始めました。あと僅かな時間しか着れないその上着は、子供二人分の思い出に繕いが加えられ、お金では買うことの出来ないものとなりました。

 

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